では、多読向けのレベル別読みものは、実際にどのように作られるのでしょうか。
原作を語彙や文型表にしたがってリライトする場合の例を、「蜘蛛の糸」(芥川龍之介作)で見てみましょう。
○「蜘蛛の糸」芥川龍之介(「芥川龍之介全集2」ちくま文庫、筑摩書房より)
ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊からは、なんとも云えない好い匂いが、絶え間なくあたりへ溢れて居ります。
極楽は丁度朝なのでございましょう。
やがて御釈迦様はその池のふちに御佇みになって、水の面を蔽っている蓮の葉の間から、ふと下の容子をご覧になりました。この極楽の蓮池の下は、丁度地獄の底に当たって居りますから、水晶のような水を透き通して、三途の河や針の山の景色が、丁度覗き眼鏡をみるように、はっきりと見えるのでございます。
私たちは、「蜘蛛の糸」が短編であること、比較的平易な言葉で書かれていることからレベル3の読みものにリライトすることにしました。
リライトにあたっては、まず、冒頭の「お釈迦様が極楽の蓮池のふちを歩いている」場面を、学習者がすんなり理解できるのかどうかという疑問が湧きました。そこで、以下のようなリライトをしました。
○簡約版「蜘蛛の糸」『レベル別日本語多読ライブラリー にほんご よむよむ文庫』レベル3、Vol.1「芥川龍之介短編集・蜘蛛の糸/鼻」所収(監修・NPO法人日本語多読研究会 アスク出版)
人は死んだらどこへ行くのでしょうか。
生きているときにいいことをした人は、死んでから極楽へ行きます。罪人(悪いことをした人)は、地獄へ行きます。
極楽はどんなところでしょう。
極楽にはお釈迦様が住んでいます。とても静かで、花がたくさん咲いていて、いいにおいがしています。極楽はとても楽しいところです。
地獄はどんなところでしょう。
地獄には鬼がいます。鬼は、罪人たちを棒で打ちます。罪人たちは毎日苦しくて、痛くて、逃げることはできません。地獄はとても怖いところです。
ある日のことです。お釈迦様は、極楽の池の周りを一人で歩いていました。
池には蓮の花が咲いています。蓮の花は真っ白で、その真ん中の金色のところから、とてもいいにおいがしています。
周りはとても静かです。極楽は朝なのでしょう。
しばらくして、お釈迦様は立ち止まって、蓮の葉の間から池の中を見ました。
池のずっと下の方には地獄があります。池の水はとてもきれいなので、地獄がよく見えました。
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